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第3話 作戦会議

Auteur: 十色
last update Date de publication: 2026-07-10 17:05:27

 塵埃まみれの小さな空間――体育倉庫の中に、僕と律はそこにいた。黴臭さと埃っぽさを混ぜ合わしたような不快極まる匂いを鼻腔で感じながら。

「じゃあ神くん。そろそろ始めようか?」

「……そうだね」

 一体、これから何を始めるのかというと、会議だ。議題は言わずもがな。三人に対する復讐について。

 だけど――

「神くんどうしたの? なんかボーッとしてるけど」

 体操部が使用するマットの上に腰かけながら、律は声を発した。

「……いや、ちょっとね。なんか現実感がなくてさ」

 嘘ではなかった。

 一生、僕は二度と、柔らかで優しい声音を聞くことも、言葉を交わすことも、姿を見ることも、触れることも。それら全てを失ってしまった。絶望していた。

 だけど、どういう形であれ、死んでしまった恋人と再会できたのだから。現実感が湧かないのは至極当然だ。

 が、しかし。実際は少し違った。僕が今、一番深く考えていたのは『復讐』についてだ。

『人を呪わば穴二つ』と言われているように、復讐をすることで、それらは必ず返ってくる。降りかかってくる。そういうものだ。だからこそ、こればかりは深く考えざるを得なかった。

 でも、復讐はする。いや、しなければならない。逃げてはいけない。でなければ、律の恋人として失格だ。

 それだけは、確かだった。

 復讐であり、これは仇討ちでもあるのだから。

「――なあ、律。復讐ってどうやってするんだ? さっき『やりようがある』って言ってたじゃん?」

「うーん、それについては案はあるんだけど、順番をどうしたらいいのかなって。黒羽を最後にすることまでは決めてるんだけど」

「最後に!? ちょ、ちょっと待って律!? それだとまた黒羽が、全てを揉み消すに決まってるだろ!? だから順番的には黒羽を最初にした方が――」

「うふふっ。それなら大丈夫なんだなあー、これが。この律様にお任せあれ!」

 僕が言い終える前に、律はすくっと立ち上がり、胸を張りながら腰に手を当てながら答えた。

 昔のことを思い出す。

 そういえば。自信がある時の律って今のようなポーズを取ったりしておどけて見せたりしていたんだっけ。

 そんな律を見て、こんな状況でありながら、懐かしさも相まってついつい笑いそうになってしまった。

「と、いうわけで。神くんよ。今から言うことをしっかりと聞きたまえ! では、律様渾身の案を発表します! ではでは――」

 *   *   *

「――なるほどね」

「でしょ? 我ながら名案だなって。これならあの黒羽が揉み消すことはないはずなの。いや、『揉み消せない』って言った方が正しいのかな?」

「だから、僕が律に触れられた時に『私が考えてた以上に』って言ってたってわけか……」

 思っていた以上に、律が提案した復讐方法はしっかりとしたものだった。これなら揉み消すことは不可能だし、むしろ、黒羽を追い込んで恐怖を感じさせることもできるはずだ。

「と、いうわけで。作戦会議はこれにて終了。じゃあさ、神くん? ちょっと付き合ってもらえないかな?」「付き合う? 別にいいけど、どこに?」

 この問いかけで返ってきた律の言葉で知ることになる。最初、作戦会議は僕の部屋でしようと提案したのだが、しかし、律はこの体育倉庫を指定してきたのだ。その理由を。

 そして、恋人である律に対して初めて抱いた。『恐怖』という名の感情を。

 彼女の瞳の奥底に宿る、『赤い色』を見て。

「私が飛び降りた屋上に」

【続く】

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